桜の木の下で
「……どうしよう」

私はどれくらいの時間を歩き続けたんだろう。
辺りの景色はさっきよりも薄暗く、明らかに道を違えた気がしてならない。
うう、やっぱり引き返した方が良いのかな。

それとも、このまま歩き続けると何処かの街に着くことが出来るのだろうか。
どっちの道が正しいのか分からず、思わず立ち止まってしまう。

先程までの暖かさは何処へやら。
春の寒さが、体を震わせる。

そんな時。
背後からガサリと物音がした。
もしかして、こんな所に人が!?

淡い期待は一瞬で恐怖へと変わっていく。


明らかに血走った、煌煌(こうこう)とした瞳。
鋭い牙に荒い唸り声、銀色の毛の狼がそこにいた。
口から滴る大量の血を前にし、思わず息を飲んだ。

もしかしてこの辺りに人がいなかったのは、この狼が……!
私は踵を返し、全力で元いた道を駆け巡った。

逃げなきゃ、殺されるっ……!!
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