Cry for the moon
中学2年の秋、リュウトがローディーをしていたバンドが解散したのを機に、ずっと固定のベーシストが不在のままだったトモキのバンドに、リュウトが加入する事になった。

ベーシストのリュウトにとってドラマーのトモキは、初めてスタジオで一緒に演奏した時から、不思議としっくりくる相手だった。

その後、メンバーが変わったりバンドを解散した後も、リュウトとトモキは新たなバンドを結成して、何年も一緒に音楽を続けている。

中学卒業後、公立高校に進学したトモキは、現役で地元の国立大学に合格し、バンド活動やバイトもこなしながら大学生活を送っている。

リュウトは時々、こんなに性格も生き方も違うトモキが、なぜ元ヤンの自分と一緒にいるのだろうと不思議に思う事もある。

それでも、見るからに悪そうだった激ヤンのリュウトを怖がりもせず、当たり前のように普通に接してくれたトモキは、リュウトにとって他の人とは少し違う、親友と呼べる唯一の存在だった。

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