【短編】屋上とスイーツ
「はあっ…、疲れた…」

「雨とかマジ勘弁してくれよ…」


「…先輩、トサカがぺったんこですよ」

「なっ!?…お前こそ貞子みたいだぞ」

「「…」」


「ぷ」「ぶ」

「「ははははっ!」


雨の前の沈黙等無かったように2人は笑いあった。


「何やってんだ、俺等…ぷははっ!」

「本当っ!」


いつの間にか雨はあがり、青空が顔を覗かせた。








………………………………

理緒は意気揚々と屋上へ向かっていた。

今日は翼の誕生日だという情報を入手して、昨日は奮発して誕生日ケーキを作ってきたのだった。


「翼先〜輩♪…あれ?」


翼は珍しくベンチの上で寝ていた。夏の暖かい日差しが翼の整った顔を照らす。

理緒はじーっと翼の顔を除き込む。

「(綺麗な顔してるな…)」

伏せられた長い睫毛や通った鼻筋に至近距離で見とれてしまう。




グイッ
「うきゃっ!?」


突然、腕を引っ張られて体制を崩す。目の前には顔を赤くした翼のドアップ。


「…あんまり除き込むんじゃねえ…」

「お、起きてたんですか!?」
「ばっちり起きてるっつーの。


…お前、もっと色気のある声出せねえのかよ。」

「余計なお世話です!

あ、それより先輩!ハッピーバースデー!」

「お前、何で知ってんだ!?」

「ふふ、女の情報網をなめてもらっちゃ困りますよ。さ、ケーキ作ってきたんですよ!食べましょ!」

「ったく…お前には敵わねえな」



嬉しそうに走り出す理緒の後を追う翼の表情は穏やかだった。


















ケーキを食べ終わった2人は隣に並んで座っていた。


「そういえば先輩、なんでこの屋上昼休みになっても私と先輩しかいないんですか?」

「だから、此処は俺のテリトリーだっつったろ。生徒は勿論教師だって近付いて来ねえよ。知らなかったのはお前だけだ」

「ええ!?そうなんですか!?」
「ばーか。」
「うう…」



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