俺様王子
この頃は夢を見ていた
《キーンコーンカーンコーン》

授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。


「ふぅ~。やっと終わった・・・」

そう言って私、一ノ瀬一葉(いちのせかずは)は、グッと伸びた。

「か~ずは!今日も疲れたね~」

「うんうん。でも数学の宮下先生、今日もかっこよかった~」

「・・・」


私の親友の相沢茉桜(あいざわまお)は、顔をしかめた。


茉桜は頭が良くて、運動神経も抜群。

しかも、顔が整っていて美人だ。

同じ人間なのに・・・

なんでこんなに違うんだろ?


私は茉桜にいつも助けてもらっている。

茉桜とは中学からの付き合いだ。

入学式の日にたまたま隣で、
初めて話したのにすぐに仲良くなったっけ・・・


そこからはいつも一緒にいて一緒に勉強してこの高校に入った。

茉桜は余裕だったけど、
私は茉桜にいっぱいおしえてもらったな~。

今でも分からないところは教えてもらっている。 

ほんと頼りになるな~。


性格もいいから、当然モテる。

毎日のように告白されているけど
一度もOKしたことがない・・・


そう、茉桜は大の男嫌い。

だから、告白されても全部ふっている。

そんなところも茉桜らしくて
私は好きだけど・・・


「はぁ~。今日も告られたし・・・うざい!!」

茉桜は机をバンッと叩いて怒っている。

いつものことだ。

だからクラスの人も聞いてこないし、
むしろ当たり前になっている。
  

そんな茉桜を見て、私はいつも
もったいないな~と思う。

私もモテたいよ・・・。


茉桜をなぐさめていると、
廊下を歩いている神埼くんの
姿が見えた。


「はぁ・・・。今日もかっこよすぎ!」

「なにがかっこいいのか・・・。
ああいうやつに限って裏があるよ絶対」

茉桜は神埼くんを見て呆れたように言う。


「なっ・・・そんなことないもん!
でも見てるだけはイヤだな~」

「なら、告白すればいいじゃない。」

「えっ!?無理だよ~!
私なんかがOKされるわけないじゃない!
あの神崎くんに告白なんて・・・」


私の好きな人、神埼紘(かんざきひろ)は、
入学式のときに見て、一目惚れをした。

みんなに優しくて、影では王子って呼ばれてるほど。

でもほんとに王子様みたいで、
神埼くんを見かけると胸がドキドキする。


だからこの時はまだあんな事が起きるなんて思ってもいなかったんだ・・・
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