ふわふわりと風船

 首にカッターナイフを押し付けた僕に、楓が笑った。

 出来ないくせにと、言われた気がした。

 臆病だからここまで生きながらえた。

 そう言われた気がした。

 最愛の彼女に、カッターナイフを向けたのは、憎いからか。

 愛しい最愛、これほどの愛でもまだ足りないならもう術がない。

 それでもまた彼女は笑っていた。

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