ふわふわりと風船

 「健斗」

 僕の名前を呼ぶ、僕の名前だけを呼ぶ。

 飴のように甘い

 雨のように降り注ぐ愛しい声色。

 「かえで」

 「健斗」

 こんなに近くにいても、彼女は僕のモノにはならない。

 「ダレのモノにもならないでヨ」

 口をついて出た本音に、彼女が笑う。

 
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