からっぽ。
「もう、やめなよ」


友達は言う。



「好きでいるのを、やめなよ」



「うん。分かってる」



分かってるよ、そんなこと。


願っているよ、誰よりも。


だけど、分からないんだよ。


その方法が。



「ちょっとずつでいいから」



友達は微笑んだ。



暖かった。


優しかった。



あなたもいつかこんな風に笑っていたね。



「落とし物、きみのでしょう?」



差し出された消しゴム。


微笑えんだ笑顔。


優しい声。



全部全部、記憶に残ってる。



大事な大事な、恋の始まり、その瞬間。



思い返しては胸がいっぱいになる。



やっぱり、あなたが好き。


大好き。


大好きだよ。



今も、変わらず。



「だけど、変わっていかなくちゃ」



ひっそりと呟いた。



変わらないもの。


変わっていくもの。


変わらなきゃいけないもの。



私には、分かってるから。


ちゃんと、知ってるから。


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