からっぽ。
友達と別れて1人で廊下を歩く。


突然だった。


廊下の角から現れた人物。


お互い、驚きのあまり立ち止まった。


目を見開いている。


けれどなんて声をかけたらよいか分からなくて、お互い黙ったまま。


重い沈黙が流れる。



どうして、あなたはいつもそう。


急に現れたりするの。


いつも願ったって現れないくせに、どうしてこんな時に。



変わらなくちゃいけないと、そう決意したところだったのに。



どうしてあなたは私の決意を揺らがせるようなことばかりするの。



「急に立ち止まってどうしたの?」



その声でふとあなたの隣を見れば、女の子がいた。


あなたと同じクラスの可愛い女の子。



「あ…ごめん。何でもない」



あなたは柔らかく隣の女の子に笑うと、私の隣を通り過ぎた。


それは一瞬のことだった。


すれ違いざま、あなたは何も言わなかった。


笑顔は消えていた。


ただ私の隣を通ったその瞬間だけ、歩く速度が遅くなった気がした。


あわてて振り返ると、私は目を見開いた。



2人が手を繋いでいたから。


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