MAHOU屋
集合場所で班の人たちと別れ、一分くらいひとり歩く。
家の塀が見えて、小走りになる。
駆け込むようにアトリエに入った。


「おかえり」


レインさまはチヒロの顔を見て早々、「ソラの迎え、頼んで良い?」と訊いた。
オーブンが予熱完了を告げている。
チヒロは承諾し、ランドセルをソファーに置く。


「今日はちょっと待つかも」


レインさまはときどき予言めいたことを言って、それが不思議と当たる。
チヒロはランドセルの中からプリントを取り出して持っていくことにした。
明日詩の暗唱テストがある。
そうして待っていると、あっという間にバスが来た。
先生がソラの手を引いて階段から降りてきて、チヒロはその手を代わる。
月曜日は特に泣きながら帰るソラだったけれど、今日は不思議と機嫌がよくバスが見えなくなるまで手を振っていた。
幼稚園も一ヶ月が経って、ようやく慣れてきたのなら嬉しい。


アトリエに戻るとオーブンが焼き上がりを教えてくれた。
チヒロは十五分以上外で待っていたと気付いた。


「おやつにする?」


そうレインさまが言ったタイミングで、庭の砂利が侵入者を教えてくれた。
アトリエの前にきちんと郵便受けがあるのに、中までソイツは入ってくる。
律儀にバイクのエンジンまで止めて。
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