MAHOU屋
「届かないだろうなと思って、書いたんだ」
夜中に目覚めたときに、急に襲われる不安。
気持ちが止まらなかった、蛇口が壊れた水道みたいに。
だから、なにか言葉にして吐き出さないと、「先に死んでしまいたい」と声でも呟いてしまいそうで、紙に書いた。
それだけで終われば良かったのだけれど、ソラのことを知って、ポストへ出してしまった。
絵本の悪魔にそそのかされたみたいな後悔が、あとから浮かんできた。
「俺は死んだ人に手紙は届けられないけど、神様にも届けられないんだ。だから、この願いは、伝わらない。魔女には届けられると思うけど」
「魔女?」
「きっととびっきりのクッキーを焼いてくれるぞ。ただ今回は俺の郵便屋さんの権限で、この手紙は渡さない。虹歩が悲しむだろうからな」
「虹歩? レイン、が―――?」
レインさまは、魔女。
レインさまは普通の人とは違うことを、なんとなくわかっていたけれど、言葉としてはっきり言われると、石で殴られたような衝撃が胸に押し寄せてくる。
「だから、魔女の代わりに、俺がお前の願いを叶えてやる」
そう言って連れてこられたのは、二階の書斎前だった。
いつかまえに体験した目に見えない恐怖を思い出して、身体ががたがた震えだす。
デビルはあの時と同じように背中にぴったり寄り添って、肩を抱いてくれる。
「開けるけど、俺がいるから大丈夫」
夜中に目覚めたときに、急に襲われる不安。
気持ちが止まらなかった、蛇口が壊れた水道みたいに。
だから、なにか言葉にして吐き出さないと、「先に死んでしまいたい」と声でも呟いてしまいそうで、紙に書いた。
それだけで終われば良かったのだけれど、ソラのことを知って、ポストへ出してしまった。
絵本の悪魔にそそのかされたみたいな後悔が、あとから浮かんできた。
「俺は死んだ人に手紙は届けられないけど、神様にも届けられないんだ。だから、この願いは、伝わらない。魔女には届けられると思うけど」
「魔女?」
「きっととびっきりのクッキーを焼いてくれるぞ。ただ今回は俺の郵便屋さんの権限で、この手紙は渡さない。虹歩が悲しむだろうからな」
「虹歩? レイン、が―――?」
レインさまは、魔女。
レインさまは普通の人とは違うことを、なんとなくわかっていたけれど、言葉としてはっきり言われると、石で殴られたような衝撃が胸に押し寄せてくる。
「だから、魔女の代わりに、俺がお前の願いを叶えてやる」
そう言って連れてこられたのは、二階の書斎前だった。
いつかまえに体験した目に見えない恐怖を思い出して、身体ががたがた震えだす。
デビルはあの時と同じように背中にぴったり寄り添って、肩を抱いてくれる。
「開けるけど、俺がいるから大丈夫」