MAHOU屋
自分の心がさわさわしてくる。
身体に異物が入ったような感覚。
その異物の正体がわからず、不安でたまらない。
その不安をどうにか解消するには、電車に乗るしかない。
電車に乗って、会いに行かなくてはならない。
そうでなければ不安は解消されないのだろう。
口の中いっぱいに、消えたはずのクッキーの味が広がっていて、そう訴える。
サチコさんが言っていた伝説は、本当だった。
自分はクッキーを食べて<魔法>にかかったのだ。
<魔法>は自分に会う理由を与えてくれた。
タクマは飛び出すように家を出て、駅へ向かった。
その腕には<MAHOU屋>店主から贈られた箱を抱きしめながら。
<おわり>