MAHOU屋
食卓にはレインさまがアトリエで作った朝食が並んでいる。
じゃこ納豆、ほうれん草の玉子焼き、根菜の味噌汁、そして宝石のようにつやつや光ったご飯。
和食だけど、この洋館にぴったり馴染んでいる。


三人で食卓を囲む。
レインさまはむっつり不機嫌なソラに納豆ご飯を作ってから、スプーンを握らせている。
テレビは「話題」の話をしていた。
生まれつき耳が聞えない作家さんが音を実際に聞いた以上の描写力で書いた本が大ブレイクしているようだった。


レインさまは機嫌が直らないソラのために子供番組に変えた。
チャンネルを変えても、左上に時間が映っているので問題ない。


チヒロは黙々と朝食を食べ終わり、ランドセルをかついで玄関へ向かう。
数ヶ月前まで黄色いカバーがついていたランドセルは新品のように真新しかったけれど、今はようやく手に馴染むような傷があちらこちらにでき始めて嬉しい。


「にぃに、いってらっしゃい」


もみじから少し成長した手が、テレビに向かって振られている。
レインさまが苦笑いしながらソラの代わりにきちんと「いってらっしゃい」と言ってくれた。



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