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2日後の朝 黒斗の自宅内ダイニング



「…………」

「…………」


互いに無言のまま、テレビを見つめる黒斗と鈴。



『部屋の中で遺体となって発見されたのは風祭 みどりさん、そして娘の風祭 みきほさん。娘のみきほさんは、首に包丁が突き刺された状態で発見され……』



ニュースに取り上げられているのは、みきほとみどりの遺体が発見された時の様子だ。

みどりは死神に殺され、みきほは包丁に付着していた指紋と、みどりの指についていた血液から、母親に殺害されたと推測された。



「……結局、ウチはみきほさんの力になれなかったんや……」


うつむき、涙を流す鈴。


「……そんなに自分を責めるな。どうしようもないことだったんだ」

「せやけど……! 友達なのに、何も出来なかった自分が、悔しくてしゃあないんや!」

「……それは違う」


黒斗の言葉に、鈴が顔を上げる。


「……“あたし、あんた達が最初で最後の友達で良かった。ありがとう”……この間、病院で風祭がそう言っていた」

「……みきほさん……が?」

「ああ。お前と佐々木は、風祭の心を僅かでも救ったんだ。何も出来なかったことは無い」



もし、みきほが鈴や玲二と友達にならなかったら、最後まで暗い感情を抱いたまま、生涯を終えただろう。

楽しい時など無かったみきほにとって、3人と過ごした時間は満ち足りていて、初体験の連続だった筈だ。

実際、死亡時のみきほの魂は殆ど憎悪に覆(おお)われていたが、ほんの僅かだけ友達を大事に思う優しさが残っていた。



「……そっか……みきほさん、そんな嬉しいこと言ってくれてたんか……それやったら……良かったなあ……」


涙を流しつつ、微笑する鈴。


「でもなクロちゃん。さっきの“お前と佐々木は”っちゅうのは間違いやで。正しくは“俺達”や。クロちゃんやって、みきほさんの友達なんやからな」

「……そうか」


僅かに口元を緩ませながらも、そっけなく黒斗が答えた。

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