デスサイズ
「ば、化け物……」
腰を抜かし、へばる平田。
そんな平田には目もくれず、黒斗は江角にゆっくりと歩み寄る。
「っ……い、いやっ!! 来ないで!!」
死神を信じていなかった江角だったが、銃弾をいくら撃ち込まれても死なない黒斗に恐怖を覚える。
「助けて平田さんっ!!」
助けを求めるが、平田は腰を抜かしたまま動けない。
「使えないわね! このヒゲオヤジ!!」
平田に暴言を浴びせながら、江角は素早く部屋の出口に向かって走り、ドアノブを掴んで回すが、扉は開かない。
「な、何で!?」
鍵は掛かっていないというのに、いくら回しても扉は開かない。
ガチャガチャという音が、虚しく響くだけだった。
「何度目だ?」
真後ろから声が聞こえ、江角は振り返って黒斗と向き合った。
「な、何がよ!?」
「人を殺したのは何度目だ?」
江角は恐怖を感じながらも、高圧的な態度で黒斗の質問に答える。
「とっくにご存知なんでしょ? 3回よ、3回! それがどうしたってのよ!」
黒斗は無言のまま右手を上に挙げる。
すると空間に黒い穴が開き、そこから大鎌を引っ張り出した。
現れた大鎌の柄は血を連想させる深紅色で、刃の付け根には死に恐怖する人間を嘲笑うような表情の髑髏(ドクロ)がかたどられている。
まさに死神の鎌“デスサイズ”に相応しい形状である。
「お前はやりすぎた。犯した罪に対する罰を受けてもらう」
冷血にそう言い放つと、黒斗は身の丈ほどあるデスサイズを片手で軽々と振り上げ、江角の胸に降り下ろした。