デスサイズ
午後11時56分
間もなく日付が変わろうとしている時間帯、林は寝室のベッドで仰向けになりながらビールを飲んでいる。
ココアに目をつけていた時から、林はリンのこともマークし、鈴がよく行く場所は既に調査済みだった。
毎朝、学校がある日は黒斗の家に向かうことを知っていた林は、先回りしてリンの生首を置き去った。
(あのガキ、さぞかしショックを受けただろうな)
住宅街という人目につきやすい場所ゆえに、鈴がリンを発見する場面を見れなかったのは残念だったが、あの可愛がりようだったら悲しんでいるのは間違いないだろう。
「俺の痛みを、皆が思いしればいい。誰も俺のことを解ってくれなかった復讐だ。ハッ、ハハハ」
ほろ酔い気分で笑い出す林。
ふと思い出したように起き上がると、部屋の隅に置いてある黒いゴミ袋へと近寄り、中身を確認した。
袋の中に入っているのはリンの首なし死体だ。
(さて……首だけ死体の方がインパクトあると思って、そうしたが……さっさと捨てないとな)
動物を殺すことに抵抗はなくとも、さすがに死骸をいつまでも自宅に置いておくのは気分が悪い。
とりあえず、もう少し夜がふけて、人目が少なくなってから捨ててこようと考え、ベッドに戻ろうとする。
―何度目だ?
「ハッ!?」
突然聞こえてきた声に、心底驚き部屋を見回す。
「だ、誰だ!?」
問いかけに答える声は無く、豆電球が照らす薄暗い部屋の中には誰も居ない。
それなのに、林は誰かからの視線を確かに感じていた。
(ま、まさか…)
震える足でゴミ袋に近づき再度、中を覗きこむ。
そこにあるのは先程と変わらない死骸だけだ。