王子と魔女の恋御伽
said ことね


私は雲に隠れて見えなくなってしまった月の方を眺めながらさっきの出来事を思い出す。


「私はあなたに”光”を与えに来たの。」


魔女と名乗った彼女はそう言った。


まるでおとぎばなしのお姫様のような長い真っ黒な黒髪、色白な肌に大人っぽさを含む容姿。


そしてそれとは対照的な幼さを感じる笑顔。


魔女という言葉とは正反対の存在。


そして、突然現れては嵐のように去って行ってしまった彼女。


普通ならこんな状況、怪しまなきゃいけないんだろうけど不思議と彼女に対しての不信感はなかった。


むしろ、これから起こることに対しての楽しみな気持ちもあった。


ふと思う。


もう、どのくらい私は感情を忘れていたのだろう。


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