王子と魔女の恋御伽
はじまりの合図
「ただいま戻りました、イブ様。」
現世、つまりさっきまで私がいた世界から本来の世界まで返ってきた私は、私たち指揮者の現”最高権威者”であるイブ様のもとに来ていた。
「朱里っ…!
おかえりなさい、今日は大丈夫だったの?」
壮大な部屋の中にある大きなベッドの上、イブ様はとても心配そうな顔をして上体を起こしていた。
「イブ様、私の心配なんかより少しは自分の心配をなさってください。
それに、こんな時間には起きていても大丈夫なんですか?
少しでも具合が悪いようなら…」
そこまで言うとイブ様は「大丈夫」と笑顔を浮かべた。
「今日は調子がいいの。
それより、朱里に何もなくてよかった…。」