王子と魔女の恋御伽
「じゃあ、行ってきます。」
「いつも、こんな仕事ばかりで本当に申し訳ないわ、朱里。」
扉の前に立った私にそう呼びかける美しい女性。
もうずっと昔からベッドに寝たきりの彼女---イブ様はいつもと同じ謝罪を述べる。
「気になさらないでください、イブ様。
これは私たちの役目なのですから。」
そういって私はイブ様に笑顔を向ける。
「ありがとう…朱里。
でも…今回の仕事はっ…」
「分かってますよ、イブ様。
もう決心はついています。
それにーーー」
「私たちにとって、”死”は救いでしょう?」
申し訳なさそうな表情を向けたイブ様を背に、私は扉を開いた。