王子と魔女の恋御伽
「そんなに今夜の月は綺麗?」
私がそう問いただすと彼女はこちらを見ることもなく「誰」と言った。
「んー。
魔女、とでもいっておこうかな。」
別に名前を名乗る必要はない。
私たちの”仕事”に、名前なんて要らないのだから。
すると彼女は初めて視線をこちらに向けた。
腰あたりまである長いストレートの髪が印象な、とても、とても綺麗な顔立ちをした女の子だった。
「随分とかわいらしい魔女さんね」