シルビア



「なによ!邪魔しないで!!私はその女と話をしに来たの!!」

「……申し訳ないですけど、ここは会社で彼女もまだ業務中の身です。私用でしたらお帰りください」



こちらへ向けられる、敵意にまみれた視線。

一瞬ビク、と怯みそうになるものの、怯んだら負けだ。そしたら黒木ちゃんがどうなるか分からない。その一心で堂々とした顔を装い立つ。



「私はあなたと彼女、どちらが正しいのかは分からないですけど……でも、彼女はそういった不誠実なことをする子じゃないと思います」

「凛花さん……」

「一方的に彼女を責めるんじゃなくて、まずはその彼氏さんも含めて、3人できちんと話し合われてみてはどうですか?」

「っ……」



精一杯、丁寧に宥めたつもり。けれど彼女はそれでは収まらなかったらしく、一層激昂してみせた。



「あんたに何がわかるのよ!!っ……バカにするんじゃないわよ!!」



その声と同時に、振り上げられた革のハンドバッグ。殴られる、けど、避けたら背後の黒木ちゃんが危ない。

そう逃げたい気持ちをぐっと堪え、目をつむって覚悟を決めた。


「凛花!!」



瞬間、呼ばれた名前とバシッ!!とバッグが肌に当たる音。けれど、なかなかが当たる感触はなにひとつ感じられない。



あ、れ……?痛く、ない?

そっと目を開き見てみれば、そこには私を庇うように前に立つ、望の姿があった。




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