シルビア
「望……?」
私の代わりにバッグで殴られたのだろう、見ればその左瞼は赤くなっている。
「望!?大丈夫!?」
「ん、平気……凛花と黒木さんは?ケガは?」
「私たちは大丈夫……」
ふと思い出し目の前の彼女を見れば、小さな傷とはいえ他人にケガをさせたことでようやく我に返ったらしい女性は、力が抜けたようにその場にへたり込んだ。
「大丈夫ですか!?なにかありましたか!?」
そこでようやく駆けつけてきた警備員たちに彼女は連れて行かれ、その場には騒ぎを聞きつけた野次馬と私たちだけが残された。
背後の黒木ちゃんを見れば、彼女は驚きとショックとで、今にも泣き出しそうな表情だ。
「……黒木ちゃん、とりあえずフロアに戻ろう。ね」
「……、」
そんな黒木ちゃんの肩を抱きしめ、私たちは自分たちのフロアのある階へと戻って行った。