シルビア




「もしかしてさっき言いかけてた相談っていうのは」

「……はい。彼は『別れたきりなにもない』って言ってたんですけど、信じられなくて……本当はずっとあの人と続いていたんじゃないかとか、そんなことばかり思っちゃって」



ぽつり、ぽつりと不安を言葉に表すと、その目にはまた涙が浮かぶ。



「やっぱり私、こんな気持ちで彼と結婚できないです……信じることも確かめることもこわい、好きなのに、一緒にいられない……」



『信じることも確かめることもこわい』

『好きなのに』



黒木ちゃんのその言葉に重なるのは、あの頃の自分。



なにひとつ、確かな言葉も聞けずにひとり考え込み、塞いでいた。

信じることも出来ずに、結局すべて失った。

愛しい存在も、かけがえのない日々も、すべて。



このままじゃ、きっと彼女も同じになってしまうかもしれない。

そんなの、いやだ。そう思うと、自然と唇は動き出して。



「それ、彼氏さんにちゃんと話した?」

「え……?いえ、言いづらくて」

「じゃあまず、きちんと話し合いな。本当のことは聞かなきゃ分からないんだから」



涙に濡れた目元を、まっすぐ見つめて言い切る。

過去でも今でも逃げてばかりの私に、こんな言葉を言う資格は、きっとない。

だけど、それでも伝えたい。



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