シルビア
「紗英!」
その時、ガチャッと勢いよく開けられたドアから駆け込んできたのは、スーツにメガネをかけた男性。
細身の少しインテリっぽい見た目に反して、彼は必死な形相で黒木ちゃんだけを見てこちらへ駆け寄る。
「祐二!?な、なんで……」
「会社の人から連絡貰って……大丈夫か!?ケガは!?」
「わ、私は大丈夫……」
その会話から察するに、黒木ちゃんの彼氏さんなのだろう。
驚きに涙も止まる黒木ちゃんに、彼氏さんは心から安心したように抱きしめる。
「無事でよかった……、怖かったよな……ごめんな、紗英」
「祐二……」
連絡を受けて大急ぎで駆けつけたのだろう。その懸命さと彼女をしっかりと抱きしめる姿から、きっとふたりは大丈夫だろうと感じることが出来た。
「……望、行こ」
「うん、だね」
今はふたりきりにしてあげるのが一番いいだろう。私たちはそう察すると、そのままそっと部屋を出た。