シルビア
「凛花さん、次の商品いきましょうか」
「あ、うん、そうだね。次は……あれ、一色足りないや」
黒木ちゃんの声にふと我に返り、用意してあった商品を見れば、そこには青・紫・ピンク、とそれぞれ色違いの石がついたネックレスが3本ほど置かれている。
ところが、この商品はあとひとつ、緑色もあるはずだ。
あ……そういえばさっきデスクに置いてそのままだ。
思い出したその時、部屋に入ってきたのは、織田さん。
丁度部屋に書類を置きにきたところだったらしい彼女は、ベージュ色に紺のストライプ柄のスカートを揺らす。
「あ、織田さん。ちょうどよかった。悪いんだけどフロア戻るようなら私のデスクから……」
ところが、織田さんは一度こちらを見たものの、ツンとした態度で無視をして部屋を出て行ってしまった。
「……あれ」
「うわ、明らかな無視でしたねぇ。やな感じ」
その態度ははたから見ても明らかだったのだろう。黒木ちゃんは呆れた顔で言う。
「どうしたんだろ……私なにかしたかな」
「凛花さんが宇井さんと仲良いって噂あるじゃないですか。それに嫉妬してるんですよ」
「へ?あ~……」
以前黒木ちゃんが言っていた、私と望が寄り添っていたという話。それが彼女の耳にも入ったのだろう。
それであの態度か、と納得できてしまう気もした。
思えば確かに、最近前以上に仕事にやる気が見えないと思っていたら……そういうこと。それにしても露骨だなぁ……。
私も思わず苦笑いがこぼれてしまう。
「……はぁ。じゃあとりあえず、自分でとってくるね」
「はーい」
織田さんのことは一先ず置いといて……今はこの仕事に専念しよう。
そう部屋を出て隣のフロアへ向かおうとしたその時、女子社員がひとりバタバタとかけてくる。