シルビア
けどさっきの営業部のフロアも広々していて綺麗で、よかったなぁ。
私たちのフロアもきっとあんな感じで、それなりの広さや設備があるのだろう。
前のビルはエアコンは壊れやすいし、強風や雷雨の悪天候だとすぐ停電したし……何度暑さに苦しみ寒さに震え、消失したデータに泣いたことか。
それを思うと、やっぱり合併してよかった。うんうん。
「ここよ。どうぞ」
想像を浮かべながら彼女に案内されやってきたのは、営業部と同じ12階の一番端にあるドアの前。
「失礼しまーす……」
ガチャ、と開ければそこには開放感に溢れた部屋がある……はず、が。
そこに広がる景色は、小さな窓に日当たりの悪い薄暗い室内。
デスク……というよりは即席で用意した長テーブルとパイプ椅子が置かれ、埃っぽく空気の悪い部屋に、おまけにエアコンすらもない。
えーと、これは……その。
「あれ……えーと、倉庫ですか?」
「いいえ。あなたたちのオフィスだけど?」
「え!?ここが!?」
『当然でしょ?』とでもいうかのように、しれっと言うその綺麗な顔に、思わず声をあげてしまう。
こ、これがオフィス?ここで毎日仕事を?
誰がどう見ても、倉庫なんですけど……!
「あ、あのー……この部屋、さっきの営業部のフロアと比べると、大分差があるんじゃないかなぁとか、思うんですけど……」
フロアを見ての感想は葛西さんも同じだったらしく、恐る恐る問う彼に彼女はふんと鼻で笑った。
「あら、うちの会社に助けてもらうような弱小企業には、倉庫程度のオフィスで充分だと思うけど?不満でも?」
「な……!?」
む、ムカつく……!
事実だけどさ!小さい会社だけどさ!だからって、この言われようはひどい!
けれどいきなり揉め事を起こすわけにもいかず、私も葛西さんも反論したい気持ちをぐっと抑え歯をくいしばる。