シルビア
「凛花さん、ごちそうさまでしたー!」
「どういたしまして。じゃあまた週明けにね」
「お疲れ様でしたー」
女の子たちの明るい声が響く、夜23時。
飲み会を終えた私たちは居酒屋を出ると、その場で解散をし、手を振り皆それぞれに自宅へ向かい歩き出す。
その中で私も自宅へ向かうべく、人であふれた駅まで続く道を歩き出した。
金曜夜の新宿の街はいつも以上に活気付き、こちらへ向かってくる人の波に逆らうように歩いていく。
あのお店のもつ鍋、おいしかったなぁ……。
けど全員分のおごりはさすがに痛かった。クレジットカードで支払ったから来月の請求が恐ろしい……。
先ほどまで熱かったほてりが冷め始め、感じた寒気にコートの前をそっとしめた。
すると、突然後ろからぐいっと引っ張られる肩。
「わっ」
なに?
驚いて後ろを向けば、そこには追いかけてきたらしい望の姿。
なんで……と一瞬思うものの、先ほどの一件を思い出し、つい不機嫌なものとなる顔のまま歩いていく。
「なによ」
「この時間だし送る……って言いたかったんだけど、凛花歩くの早すぎ……」
スタスタと早足で人ごみをすり抜けるように歩いていく私を急いで追いかけてきたのだろう。望は「はぁ、」と少し息を切らせながらついてくる。
「いい。どうせ関係ない他人なんだからほっといて」
「やっぱりさっきの怒ってる……だからごめんって!言いすぎた!」
ふん、とふてくされた顔の私の気持ちなんてお見通しなのだろう。
望は手を合わせ謝るものの、一方の私はつーんとそっぽを向き足を止めない。
なによ、さっきはあんなに思い切り拒んでおいて。今更ペコペコ謝ったりして。
「別に。どうせ事実だし。望のことなんて、関係ないし」
「……って、納得してる顔には見えないけど」
「うるさい」
望は少し困った顔をしたかと思えば、ふっと笑って、大きな手で私の手をそっと握った。