シルビア
「はい、じゃあ次はそのキャンドルを手に取ってください」
言われるままに、赤いバラの形のキャンドルをひとつ手に取ると、ピピッ、とシャッター音が響く。
社内のとある一室で行われるカタログ撮影。
真っ白な壁にイスとテーブルという質素なセットの中、マーメイドラインの真っ白なドレスに身を包み、まとめた髪にはエレガントなマリアベール。
鎖骨の間には白いパールの飾りのネックレスに、耳には同じ種類のピアス、と自社のアクセサリーで飾った私がいた。
言われるがまま、本当に立っているだけの撮影。……にも関わらず、こんな風に人に撮られるなんて人生初めてのことで、緊張してしまう。
顔映らなくてよかった……今私顔ガッチガチなの、自分でも分かるもんなぁ。
真剣な顔でカメラを構えるのは、外部のカメラマンだろうか。大きなカメラも、わざわざ外部の人に撮ってもらうというのも、自分たちでデジカメで撮っている私達とはまるで違う。
カタログやチラシに費用を惜しまないところが大手企業らしいと感心してしまう。