シルビア
「……じゃあ今、撮ったデータ上に確認してもらうから、三好さん少し休んでてください」
「はい」
一通りの撮影を終え、そう枠島さんとカメラマンの人は部屋を出て行く。
ひとり残った部屋で、一息つくように私は椅子へ腰を下ろした。
「……ふぅ」
長さのある、ふわふわとした長いドレスの裾をそっと手で持つと、その重みを感じる。
人生で初めて着る、ウェディングドレス。
モデルってなると緊張もするけど、でも着られることは嬉しいかも。
……未婚でウェディングドレスを着ると婚期が遅れるっていうけど、大丈夫かな。今更不安になってきた。
けどまぁ、そもそも今後着られるかどうかも分からないし。こういう機会でもないと着られないかも。
自分の未来予想図に、はぁ……と悲しいため息がこぼれる。
すると、コンコン、とドアをノックされる音。
「はい?」
「失礼しまーす……あ、いた」
明るい声とともに顔をのぞかせたのはなんと望で、私の顔を見た途端その顔はへらっと笑った。
「わ、本当にドレス着てる。すごいねー」
「の、望!?」
「フロアに行ったら葛西さんから『凛花さんならウェディングドレスのモデル行った』って聞いてさぁ。うんうん、綺麗綺麗」
こちらに近付きながらまじまじと見るその目が、なんだかちょっと恥ずかしく、ひらいた胸元のデコルテを隠すようにベールで体をそっとしまう。
すると、座ったままの形でいる私に視線を合わせるように望は目の前に膝をつくようにしゃがみ、下から顔を覗き込んだ。
「……お世辞言ってもなにも出ないけど」
「えー?お世辞じゃないんだけどなぁ」
そっと伸ばした指先で私の頬に触れながら、しっかりじっくりと見つめる目。
まるでその瞳に、姿を焼き付けるかのように。