シルビア
「こんなに似合うのに予定がないなんて……可哀想に」
「うるさい。余計なお世話」
いつものように、からかうような言い方。だけどその目は笑っていない。
「でも本当に綺麗だよ。……いつか、凛花と結婚出来る人は幸せだね」
つぶやく言葉は、今までで一番悲しい色をしていた。
ねぇ、どうして?
他人だと線を引いておきながら、そんなことを言うの?
いつかの、誰かとの話をしながら、そんな泣きそうな目をするの?
込み上げるのは、今日も、その姿に問いたい言葉ばかり。
「……さて、凛花のドレス姿も見れたことだし、仕事戻ろうかな」
「待って」
立ち上がり、逃げるように歩き出そうとしてしまうその姿を引き留めるように、私は同じく立ち上がり、伸ばした手で彼の裾を掴む。
待って、行かないで、逃げないで
答えを 聞かせて
「……どうして望は、その人になってくれなかったの……?」
『幸せだね』なんて言うのなら、なってよ。
一緒にいて、ドレス姿を隣で見ていてよ。
今更?ううん、そんなことない。遅くない、まだ間に合う。
まだいくらでも、恋人同士に戻れる。
だってこの心は終わっていないから。その心にも、微かに希望があるのなら、それにすがらせてほしい。
「……私たちは、もう戻れないの……?」
声とともに、涙がポロポロとこぼれだす。
これまで必死に抑えてきた想いが、溢れて止まらない。