シルビア



「改めまして、この度アクセサリー事業部の営業担当になりました、営業部の武田です。会社についてなにかわからないことなどありましたら何でも聞いてください」

「こちらこそ。自分が葛西、こちらが三好です。アクセサリーに関しては自分たちのどちらかに聞いてもらえれば、大体お答えできると思うので」



おぉ、葛西さんがめずらしく上司っぽい。さっきまでブルブル震えてたくせに。

そう声に出さずにつぶやきながら葛西さんに合わせて頭を下げれば、彼から返されたのは目を細めた笑顔。



この人はさっきの人と違って優しいかも。寧ろすごく愛想もいいし、この人が部署を見てくれるなら、なんとか上手くいきそう。

先ほどの女性とは真逆なその印象に、心の中で少し安心する。



「本当はもうひとり担当がいるんですけど……あ、きたきた」



すると続いて、部屋のドアから廊下を見ると、武田さんは誰かに「おーい」と声をかける。



担当ってふたりいるんだ。

まぁそうだよね、営業はほぼ営業部の人たちに任せることになるから、ひとりじゃ手が回らないだろうし。



さっきの女性みたいな人じゃないといいな。出来るなら武田さんのような優しそうな人……。

そう願いながら待っていれば、ひょこ、と現れた姿がひとつ。



白いシャツにグレーのカーディガン、黒いズボン姿の細い体。

黒い髪と、小さな顔、二重の目。どこか見覚えのある顔。



あ、れ……。

それは、あの日と変わらない彼。



「あっどうも、担当の宇井です!」



『宇井』。

にこっと笑って名乗ったのは、3年前に姿を消した彼……望、だった。



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