シルビア
◇「好き」
散らばったパールをかき集めて、あぁやっぱりこうなるのだと、思い知った。
望んでも、伝えても、永遠はない。
たった一晩の思い出なのだと、景色をにじませるように涙が出る。
諦めたように分かっていても、彼の感触が、体温が、肌に刻まれて消えない。
『凛花を想うと、つらいよ』
つらいよ。望を想うと、つらい。
切なくて苦しくて、涙が止まらない。
「あれ?今日宇井さんは?」
「九州支社のほうに出張行ってるよ。ほら、今度転勤になるらしいし準備とかいろいろあるんじゃない?」
「そうなんだ。宇井さんいなくなっちゃうの寂しいなぁ」
展示会も目前と迫った日の午後。フロアの女の子たちの噂話を耳に入れないようにしながら、私はひとり黙々とパソコンへと向かう。
展示会は2日後。明日は朝から晩まで会場の設営に行かなければならないし……今日出来る仕事は極力片付けておかなくちゃ。
そう意識するものの、耳は自然と『宇井さん』と、他の人が口にする彼の名前へと傾いてしまう。