シルビア
「これ、当日の段取りだそうです。さっき武田さんが『三好さんに渡しておいて』って」
「ありがと。タイムスケジュールがあると動きやすくて助かるねー」
手渡された書類にさっそく目を通す私に、黒木ちゃんは小さく笑う。
「なーんか、宇井さんいないと寂しいですね」
「そう?私は静かで助かるけど」
周りの噂話しが聞こえていたのだろうか、望の話題を出す黒木ちゃんに、私は平然を装った顔で流すように答える。
けれど、その答えに黒木ちゃんは少し黙ると小さく口を開いた。
「……凛花さんの元彼氏って、宇井さんですよね?」
「え!?」
な、なにをいきなり!?
驚きついあげてしまった大きな声。フロア内の女の子たちが『なにごとだろう』とこちらを見たことに、慌てて自分の口を塞いだ。
顔を見れば、黒木ちゃんは『やっぱり』といった様子で笑う。
「な、なんで……」
「分かりますよー。凛花さん、宇井さんの前では強がっててもちゃんと女の子ですもん。宇井さんを見る目も、全然違うし」
そんなに分かりやすかった?
必死に隠していたつもりだっただけに、知られていたかと思うと恥ずかしい……!
恥ずかしさに染まる頬を隠すように、口元を塞いだまま。
「それくらい、好きってことですよね」
それくらい、好き。
目に、空気に表れてしまうくらい。それくらい。