シルビア
……え……?
へ?え?あれ、……え?
の、ぞむ?望だよね?顔そっくりだし、声も、体型も……『宇井』なんてそうよくいる姓でもないし。
偶然?奇跡?運命?
なんで、どうして、あの日いなくなった望がここに、なんで、あれ……。
あまりにも突然のことに、頭がついていかない。
ただ、今目の前に、3年間1度も忘れたことのなかったその顔が、至って平然とあることだけが事実。
「本日からお世話になります」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
葛西さんに軽く挨拶をしてから、自然とこちらへ向けられた目。しっかりと私を映す黒く丸い瞳に、心臓がどっと跳ねた。
どうくるだろうか。驚く?開き直って久しぶりだなんて声をかける?どちらにせよ、私はどう反応したらいい?
「初めまして。わぁ、美人ですねぇ。嬉しいなー」
……ところが。次の瞬間私へ向けられたのは、『初めまして』の一言とへらっとした相変わらずのゆるい笑顔。
……初めまして、?
別れ話もせずに勝手にいなくなって、これまで1度も連絡もしないでおいて。
私がどれほど心配したか、悲しくてつらかったかも知らないで。
ふざけるんじゃないわよ。このバカ男、チャラ男、クズ男……!!
「っ……」
ブチンッと頭の中で何かが切れた音とともに、一気に怒りは湧き上がり、私は物凄い勢いで望へ平手打ちを食らわせた。
躊躇いも容赦もなく振り上げた手は、パァァンッ!!と清々しいくらいのいい音を立て、その頬を叩く。
こんなものじゃ表しきれないほどの怒り。むかつく、くやしい、悲しい気持ち。