シルビア
「望の目が見えなくなったら、私が目になる。望がひとりで立ち上がれなくなったら、隣で支えて立ち上がらせてあげる。それでもつらいなら、おぶってあげる」
私にできることなら、どんなことだって、なんだってしてあげる。
だから、諦めないでよ。終わらせないでよ。
私と一緒に、前を向いてよ。
「どんなことだって、大変だろうと苦しくなんてないよ。それでも、望の気持ちがここにあるなら。だから、全部伝えて、隠さないで。ひとりで抱え込まないで」
笑うときも、怒るときも、泣くときも、どんな時も一緒がいい。
だから、ひとりで苦しまないで。
どんなあなただって、全部受け止められるから。
「……なに、言ってるの。凛花の人生がかかってるんだよ?俺この先凛花に迷惑しかかけないかもしれないし、苦労させる。凛花も絶対後悔する」
「上等!私の人生くらいいくらでもかけてやるわよ!」
「それが嫌なんだって!凛花には、普通に幸せになってほしいんだって……分かってよ」
先ほどまで、穏やかな声だった望は、泣きそうな声で必死に訴える。
だけど、分かってなんて言われても分かりたくない。譲らない。譲りたくない。
「普通に幸せって、なに?」
健康な人と一緒になって、永くともにいること?
家族全員元気で、毎日過ごすこと?
そうだね、それもきっと幸せ。だけど、私にとってはその相手が望じゃなきゃ、意味なんてないんだよ。
「望、さっき私のこと好きって言ってくれたよね。その気持ちは、今もまだある?」
「……うん。ある、」
「なら、それでいいよ。それだけで充分なんだよ」
しっかりと触れた肌は、冷たい。だけど熱い私の手の体温と溶け合えば、心地よいぬくもりになる。