シルビア
それから月日は流れ、25歳となった頃。
地元からそう遠くない、八王子の駅前にある大きな書店で俺は正社員として勤務していた。
もともと人と接するのが好きで接客業が好きだったし、本も好きだった。意外と体力を使うハードな面もあり、軽い体力づくりにもちょうどよかったし。
その頃には病気のことなんてほとんど気にならなくなっていた。
少し疲れやすいのと、目が悪くコンタクトか眼鏡が欠かせないこと意外は、普通と変わらない生活だったから。
仕事は楽しい。少し給料はまぁ低いけど、職場環境も悪くない。そんな平凡な日々を過ごす中、出会ったのは彼女だった。
『いらっしゃいませー……、』
なにげなしに目にとまった、ひとりの女の子。
俺と同じくらいか、少し下か、くらいの年齢の見た目の彼女は、茶色い髪を軽く巻き、ぱっちりとした目をしていた。
膝上の丈の短いスカートからのぞく脚はすらりと長く、繊細な体をピンと伸ばし店内を颯爽と歩く。
顔立ちはすこしきつそうだけど、綺麗な人だなぁ、というのが第一印象。
『あ、あの人また来てる』
『先輩知ってるんですか?』
『知ってるっていうか、常連だよ。美人だからついつい目に入っちゃうよな〜』
その俺の持った印象は、周りも同じだったらしく、聞けば聞くほど従業員の間の話では、沢山いる客の中でも有名らしかった。