シルビア




『今度アクセサリー会社と合併して新しい事業部始めることにしたから。宇井と武田、お前らそこの担当な』



……ところが、なんのイタズラか。突然舞い込んだ合併の話。

しかもまさか、その合併先というのが凛花の会社で、自分がそこの担当になるなんて。



どんな顔をすればいいのか。どんな態度で接すればいいのか。今更逃げるように辞めるわけにもいかないし、ならいっそ開き直るしかない。



『初めまして!』



その結果、凛花からは出会って早々強烈なビンタを食らったわけだけれど。



3年ぶりに会った凛花は、少し痩せていて、前よりきつめの顔立ちに見えた。

でも相変わらず綺麗な目をしていて、その目をつりあげて怒る姿が嬉しかった。俺のことを意識してくれているんだと、知ったから。



へらへらと笑って、他人としての距離を保とう。そう決めたはずなのに、強がりで無理しがちな彼女をほっとけるわけもない。

近付いてしまう。触れてしまう。



あぁ、やっぱり忘れるなんて無理だ。



覚えているよ、君がコーヒーが苦手でミルクティーが好きなこと。

覚えているよ、いつも自分から動いて、意外と気をつかうタイプであること。



なにひとつ、忘れたくても忘れられないんだよ。

だってこんなに、好きなんだ。



あの日渡したバラの造花。並んだ赤とピンクのバラに迷わず赤を選んだのは、以前どこかで聞いた意味を重ねていたから。



赤いバラの葉は、“幸せを願う”。

なによりも大切な、君の幸せを。俺意外の、誰かとの幸せを。

けど、なによりも伝えたいのは、赤いバラの花に込められた意味。



“あなたを 愛してる”





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