シルビア
それから半年と少しが過ぎた、季節が夏を迎える頃。
よく晴れた日曜日、海沿いにある真っ白なチャペルにて、『控え室』と書かれた部屋で鏡の前に立つ俺は、真っ白なタキシードに身を包んでいた。
「お、宇井。なかなか似合ってるな」
「武田さん!」
そこへやってきたのは、同い年の先輩・武田さん。
こちらをまじまじと見る武田さんのその格好はいつものカジュアルなものとは違う、紺色のジャケットに水色のネクタイと、きっちりとした服装をしている。
「へへ、そうですか?照れるなぁ」
「三好さん……じゃなくて、凛花ちゃんは?まだ支度中?」
「女性は支度に時間かかりますからねぇ。おかげで俺は手持ち無沙汰で」
手をひらひらとさせ笑う俺に、武田さんもつられるように笑った。
武田さんの呼ぶ、慣れない『凛花ちゃん』の響き。
それは、今まで『三好』だった彼女が『宇井』になり、それだと俺とかぶるからということで皆下の名前で呼ぶことになったから。
もともと付き合っていたということもあり、結婚までは案外早かったように思う。
凛花の両親が、俺が病気ということを話したうえで、それでもふたりが幸せならとすんなり納得してくれたのも大きかった。
……凛花の両親には、感謝してもしきれない。
『後悔のないよう、沢山笑える毎日にしなさい』、そう笑った凛花のお父さんは、凛花を育てた人らしいと思った。
思い出し、ついまた笑みがこぼれる。