シルビア



「あ、フロアも急遽スペースを作ったのであんな倉庫みたいなところですけど、来年の春にはちゃんとしたフロアに移動できますから!安心してくださいね」

「あ、そうなんですか。それならよかった」



あの人もそこまで説明していってくれればいいのに。まぁ、今年の冬さえ越えればエアコンつきの綺麗なフロアにいけるならいっか。

安心する私の前で、望はふんふんと手元の資料に目を通している。



「えーと、外回りの営業は基本的に俺と武田さんに任せてもらって、所々は女の子たちにも手伝ってもらう形になるんですね」

「そうですね。最初はうちの営業と一緒に回ってもらって、なんとなく商品の売り方や仕入れ方把握してもらって」

「ちなみに三好さんは営業行くんですか?どうせ行くなら美人と行きたいなー、とか……」



へらっと笑って呼ばれた『三好さん』の名前。

……望に三好さん、なんて初めて呼ばれた。昔は最初から『凛花』って呼んでいたくせに。


そのしらじらしい呼び方と軽い態度についジロッと睨むと、その目つきに対し『凛花さん!』と横から葛西さんの怒ったような小声がとんでくる。



「営業ももちろん行きますけど、宇井さんとだけは行きたくないです。不真面目そうですし」

「えー?俺仕事中は意外と真面目ですよー?あ、でもLamiaって可愛い子多いですか?なら他の子でも……いっ!」



あぁもう、やかましい。

力を込めパンプスのつま先でスネを蹴ると、望は声にならない声をあげ机に伏せた。

そんな状況に気付いていないのか、気付いていても気にしないのか、武田さんは普通の顔で同じように手元の資料を見る。


< 22 / 203 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop