シルビア
「ピアス、イヤリング、ネックレスにリングにヘアアクセ……いろいろやってるんですね」
「えぇ。全て自社オリジナルデザインの日本製で。単価1000円以上なので、取引は大人向けのアパレル雑貨店中心ですね」
「確かにバラエティー雑貨や単価低めの店だと厳しいかもしれないですね。ちなみに売れ筋は?」
望と比べてちゃんとした仕事の話が出来る武田さんは、とても頼もしい。
そんな彼に、あえて望を視界に入れないようにして、バッグから取り出した資料をバサバサとテーブルに広げた。
「ピアスとヘアアクセが強いですけど、これからのギフトシーズンはやっぱりリングですね。リングもひとつひとつ指によって意味があったりとかして、女性はそういうのが好きなんですよね」
「へぇ……あ、ってことは三好さんのその指輪も意味が?」
武田さんの言葉に、その場にいた全員の視線が、私の左手の小指にはめられた指輪に向けられる。
シルバーに小ぶりなジルコニアがついただけのシンプルなピンキーリングは、以前自分で買った自社商品だ。
「左手の小指は……あ、『願いが叶う』?」
資料に載っていた『指輪をはめる指にこめられた意味』という一覧表から目ざとく意味を探し出した望に、私はつい自分の左手をそっと隠す。
「『幸せは右手の小指から入って左手の小指から抜けていく』、っていうので。左手の小指にはめる女性は多いんです」
「凛花さんただでさえ寂しい独身生活なのに幸せを逃したら大変ですもんねぇ」
「葛西さんうるさい」
余計なこと言わなくていいから!
素早くつっこむと、紙コップの中のコーヒーに小さく口をつけるけれど、その苦さにすぐ口を離す。
う、苦い。やっぱりコーヒーは苦手だ。
渋い顔になるのをぐっとこらえる私に、武田さんはそれには気付く様子なくにこりと笑う。