シルビア
「というわけで、本日からアクセサリー事業部としてこの会社の一員となりましたのでよろしくお願いします」
営業部とアクセサリー事業部の社員全員をあつめた朝礼で、はっきりとした声で交わした挨拶。
……が。
その場には冷ややかな目で腕を組み見る営業部の女性陣と、不満げな顔で睨み合うアクセサリー事業部の女の子たち、とどうにも険悪な雰囲気……。
「……って、あれ、どうしたのこの空気……」
「聞いてくださいよ、凛花さん!あの人たち私たちのこと『弱小企業の貧乏社員』って言ったんですよ!?しかもなんですかあの部屋!埃っぽいしエアコンもないし!倉庫じゃないですか!」
「まぁまぁ!フロアなら春先には移動できるから!今だけ、ね!」
口を尖らせる黒木ちゃん率いる女の子たちの不満を受け止めながら、穏便に済ませるべく必死に宥める。
「あら、事実でしょ?悔しかったら合併なんてしなくて済むくらいもっと利益出すのねぇ。フロアだってあの部屋だって勿体ないくらい。感謝しなさいよ」
「まぁまぁ!営業部の人も落ち着いて!仲良くやりましょうよ、ね!」
続いて相変わらず偉そうな口ぶりで言う営業部の美女……武田さんいわく営業部の女ボス・柳下さんに対しても必死で宥める。
アクセサリー事業部と営業部、どちらを贔屓しても怒られそうで、立ち位置が難しいなぁ……!
苦笑いをこぼす私を間に挟んで、両者は「ふんっ」と顔を背けた。
柳下さんたちは、先日私に対して向けた敵意を、同じように黒木ちゃんたちにも向けたのだろう。
若い彼女たちは可愛い顔をしながらも『女としてのプライド』が強いようで、まんまと挑発されてしまったらしい。
その場の空気はピリピリと初日から最悪だ。