シルビア
「三好さん」
「え?あ、武田さん」
私も皆に続いて営業部を後にし、自分たちのフロアへ向かうべく廊下を歩いていると、後ろから声をかけてきたのは武田さん。
その手には、白い大きな紙袋を持っている。
「どうかしました?」
「これ、うちの社員全員からの入社祝い。もらって」
「え!?」
手渡されるその袋に中を見れば、ラッピングされた少しボリュームのあるサイズのものがアクセサリー事業部の人数分、確かに入っている。
「社員全員って……柳下さんたちもですか?」
「いや、まさか。彼女たちは絶対出してくれないだろうから、ってそれ以外の社員に宇井が呼びかけてくれてさ」
「宇井、さんが……」
「『ひとり100円からでいいから』って、社内中駆け回ってたよ。あいつ、本当に行動力あるよね」
望がわざわざ私たちのために、数多くいる社員皆に声をかけてくれた……?
驚きつつ許可を得て包みをひとつ開ければ、それは小さく丸められたブランケット。
淡いピンク色とふわふわとしたフランネル素材が暖かそうだ。
「ブランケット……」
「あの部屋暖房ないからさ。少しでも暖かく仕事が出来るようにって。これも宇井の提案なんだけど」
あれこれと自分たちのことを考え動いてくれた。そんな望の姿を想像すると、それだけで自然と心はあたたかくなる。
「営業部の女性陣はあんな感じだけどさ、それ以外の社員は男女共にアクセサリー事業部のことちゃんと歓迎してるから。なにかあったらなんでも言ってよ」
それは、嬉しい歓迎の証。
優しい言葉をかけてくれる武田さんに、私はブランケットを腕に抱き頭を下げた。
「……ありがとう、ございます。宇井さんにも、お礼伝えておいてください」
本当は、自分で望にも言わなきゃいけない言葉。だけどきっと、顔を見れば素直には言えないだろうから。
その言葉を託して、またフロアへ向かい歩き出した。