シルビア
「でもうちの部署に異動したいって言ってくれるなんて嬉しいな。アクセサリー、好きなの?」
「はいっ。やっぱり麻美には、インテリアとかよりかわいいアクセサリーのほうが似合うと思うんですよねぇ」
「へ、へぇ……そうなんだ」
って、自分に似合うかどうかで志望したんだ。予想とは違うその答えに、少し拍子抜けしてしまう。
け、けど!これがきっかけでアクセサリーの商品開発の楽しさに目覚めてくれれば……!
「でも本当はもう一個理由があってぇ」
「そうなの?なになに?」
本当の理由、それに賭けるように頑張ってテンションを上げて会話に乗ってみる。
すると、織田さんは小さな口の端をふふと上げて笑ってみせた。
「営業部の宇井さんがアクセサリー事業部の担当になったって聞いたんです」
「へ?う、宇井さん?」
「はいっ。麻美ずっっと宇井さんのこと狙っててぇ、これでアクセサリー事業部に入ればもっと接する機会増えるし、そのうち付き合えちゃうかもって!きゃーっ、どーしよーっ」
あぁ、望ね。望に近付きたくて……
……って……本当の理由って、そっちかい!!!
余計タチ悪いし、ていうか望を?なんで?
不純にもほどがあるその理由に引きつりそうになる顔を必死に笑顔にするものの、ぎこちない顔になっているのが自分でも分かる。
けれど、織田さんは綺麗なデザインを施した自分の爪ばかりを見て、こちらの顔に気付くことはない。
「へ、へぇ~……宇井さんって、モテるんだ?」
「当たり前ですよぉ、イケメンだし、優しいし面白いし~。あ、でも営業部のお姉さんたちには『チャラい』って人気ないみたいですけどぉ」
確かに、顔も中身も悪くはない。
営業部のお姉さんたち……つまり柳下さんたちのような強気な女性陣からすれば好みではないのだろうけど、この子のように若い女の子たちからすれば、親しみやすく話しやすい望はそういう対象に入るのだろう。