シルビア
「ではこれから来年5月以降の商品デザイン会議を始めます」
「はいはーい、質問!商品デザイン会議ってなんですかー?」
開始早々に望から投げかけられた質問に、そういえば望たちには説明していなかったことを思い出した。
「えーと、うちの会社では、年間を通して定番的に販売してる“定番品”と、その季節限定の“シーズン品”があります。このデザイン会議ではシーズン品のデザインを決めるんです」
分かりやすいように、背後にあるホワイトボードにすらすらと文字で表せば、ふんふんと頷く望の丸い瞳は私の手先を追いかける。
「アクセサリーは特にその時期の流行りや用途、イベントによって売れ方も全く違うし、商品の鮮度も必須。だから毎月のように新柄や新作が必要になるんです」
「へぇ……確かに、女性ってすぐアクセサリー買い替えたりするもんね」
「だってお店で見かけるとつい欲しくなっちゃうんですよー。あって損する物じゃないし」
望に対しリアルな女性の意見を述べる女の子に、武田さんも感心するように頷いた。
「言われてみればうちの奥さんもしょっちゅう『お店で一目惚れした』ってピアスとか買ってくるなぁ」
「そう、その一目惚れって印象が大切なんです。その商品たちのために、この会議で常に半年先の商品のデザインテーマなどを決めて、そこから取引先に提案をします」
「あぁ、それで生産数を絞って作ればこちらとしても売れ残りを防げる、と」
定番品と違って、流行や時期に限りのある短い販売期間のシーズン品。
ましてや今の流行は掴みづらいうえに、ブームが一瞬ととても短い。
だけどその一瞬で自分たちの存在を知って貰うための、大事なアイテム。それを生み出すためには、半年以上前からのデザイン案や話し合いがとても重要なのだ。
説明を終えたところで、引き続き本題であるデザインの話へと入る。