シルビア
「来年の5月納期の商品だけど、何か案のある人は」
問いかけると、早速ひとりの手が挙がる。
「はい。やっぱり時期的に、爽やかにデニム生地と白レースを組み合わせたものはどうですか?」
「若者向けにはやっぱりそれだよね。春物でギンガムチェックが打ち出しだから、それと組み合わせて売り場に並べても可愛いし」
「あともうちょっと上の世代には、スウェット素材とかどうでしょうか。色も豊富に揃えて、夏に向けて活気づけで」
日頃からオシャレやトレンドのことを考え、いくつもの店舗を実際に見ている女の子たちから次々と挙げられる案は、代表的なものから私ひとりでは思いつかないようなものまで、様々だ。
これがあるから会議の時間は貴重で欠かせない。
キビキビと意見をあげる女の子たちと、女性用アクセサリーという不慣れな分野ながらも、必死に会議の内容についていこうとする望と武田さんのふたり。
その中で目に付いたのは、ひとり無言のまま自分のネイルを眺める彼女……織田さんの姿。
「織田さんはどう?自分の好みとか、こういうのがあったらいいなーとか、ない?」
「うーん、特にないでーす。みんなで適当にやってくださぁい」
「あ、そう……」
って、そもそも考える気がないな……。
呆れてそれ以上彼女に時間を割く気にもなれず、また会議の内容に戻る。