シルビア
「あ、そうだ!さっき上から話があったんですけど、2ヶ月後の12月にネクサス・ティーンの展示会があるそうなんです」
「ネクサスの……ってことは、社をあげてのイベント?」
「はい。毎年恒例でかなりの集客のある展示会だそうなんですけど、当然このアクセサリー事業部も参加するように、とのことで」
話しながら葛西さんが手渡す資料を見れば、そこには昨年の光景であろう写真が載っている。
大きなホールに並んだいくつものモデルルームやブースと、沢山の人々。その光景から本当に大きなイベントなのだろう。
「結構広いスペースを好きに飾っていいそうなので、展示は全部凛花さんに任せます」
「は!?任せるって……こんな大きな展示やったことないけど!?」
「だって俺もないですもん!凛花さんが出来ないものを他の子たちが出来るとも思えないですし……凛花さん以外誰に任せればいいんですか!」
そりゃあそうかもしれないけど……。
これまで私たちは、売り場の小さなディスプレイをすることはあっても、展示会、ましてやこんなに大きなスペースでのものなんてしたことがない。
それを自分で考えて飾るなんて……無理難題だ。
「『アクセサリー事業部初めての顔見せだから、インパクト強く頼む』とのことです。お願いしますね!」
葛西さんはそう言うと、私の背中をぽんぽんと叩いてその場を後にした。
葛西さん……他人事だと思って。
その後ろ姿をじろりと睨むものの、視線に気付くことなくその背中は遠くなる。
けど展示会、インパクト……うーん。
12月、ってことは来年に向けて春物のほうがいいよね。春らしい商品で、印象強く残るようなディスプレイ。ダメだ、全然思いつかない。
そちらに頭を悩ませると、先ほどとりかかろうと思っていた他の仕事も手につかなくなってしまった。