シルビア



うぅ、暗い。私暗いところとか、ホラーとか苦手なんだよね。

とにかくひとりでいるよりは、誰かといたい……。

仕方ない、営業部に行って誰かいないか探してみよう。武田さんか、誰か……この際、柳下さんでも誰でも構わない。



バッグから取り出したスマートフォンの画面の灯りで、ほんのりと辺りを照らしながら歩きだし、まずはフロアを出ようとゆっくりドアを開ける。

すると目の前には、ボォ……っと浮かび上がる男の顔があって……。



「っ……キャーーー!!!?」



お、お化けーーー!!!

突然のその姿に、思い切りあげた悲鳴。あまりの驚きにスマートフォンを手から落とし、その場にしゃがみ込んだ。



「わ、大丈夫?」

「キャーっ!いやーっ!こないでー!悪霊退散ー!」

「悪霊って……人間だから安心していいよ」

「へ……?」



わーわーと声をあげると、聞こえたのはくすくすとおかしそうに笑う声。

ふと我に返り顔を上げると、そこには笑いながら私が落としたスマートフォンを拾う望の姿があった。



「の、望……」

「大丈夫?うちの会社、残業申請出してないと、節約のために20時過ぎたらフロアの電気消されちゃうんだよね」

「そうなの?知らなかった……」

「だろうね。はい、携帯」



ピンク色のカバーのスマートフォンを受け取ると、薄暗い部屋の中、暗闇に慣れてきた目には望の姿がはっきりと見える。

黒いジャケットを着て、茶色い革の鞄を手にした、その姿。



微かに感じる安心感は、誰かがいたということに感じているものか、それとも彼自身に感じているものなのか。



……って、望の前でまた情けない姿を見せてしまった。

冷静になると、先ほどの自分を思い出して恥ずかしくなる。



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