シルビア



「黒木ちゃんおはよう、今日も織田さんすごいね」

「あっ、凛花さん!おはようございます!聞いてくださいよ、あの人!超むかつくんですよー!」

「わ、なに。どうしたの?」



声をかけた途端、爆発したようにわーわーと騒ぎ出す彼女たちに、ジャケットを脱ぎながら話を聞く。



「織田さん、昨日任せた仕事全然やってなくて、なに言っても二言目には『わかんなぁい』で済ますんですよ!?」

「しかもちょっと言っただけで他の部署の男性陣に『アクセサリー事業部の人たちが〜』って泣きつくから、まるで私たちが悪者で!」

「葛西さんに言っても逆に織田さんに丸め込まれてデレデレしてるし……本当使えない!!凛花さん言ってやってくださいよ!」



余程鬱憤がたまっているのだろう。きー!と腹立たしそうに声をあげる皆に、どうどうと宥めるものの皆の怒りは収まらない。



うーん、やっぱり織田さん……トラブルメーカーだなぁ。

苦い表情で織田さんの方を見れば、望に夢中な彼女はこちらの視線には気付かず、その隣の望と目が合う。



「あ。三好さーん、おはよ」



へらっと向けられた笑顔と、ひらひらと振られる手。

その顔は、今日もこちらの心の中など知らずにいつも通りだ。



「……おはようございます。宇井さん、昨日頼んだ資料持ってきました?」

「あ!営業部のデスクにある!」

「持ってきてください。至急」



追い払うように冷たく指図すると、望は「はーい」と足早にフロアを出た。


さて、望もいなくなったことだし……本題に入ろう。

続いて視線を織田さんに向ければ、彼女は望がいなくなったことでつまらなそうに口を尖らせる。


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