シルビア
……が。
迎えた日曜日。よく晴れた日の、都内にある大きめのホール……本日の展示会の会場前。
来場した沢山の人々が会場入り口へと向かう中、待ち合わせ場所として目印に指定したのは大きな時計の下。
青いカーディガンに白いパンツ、毛先を軽く巻いた髪をまとめただけの簡単な格好に、肩には大きなトートバッグを下げた私は、腕を組みその場に立つ。
「あっ、おはようございます」
そこへやってきたのは、武田さんから声をかけられたのだろう、今日もスーツ姿に黒縁メガネの葛西さん。
「おはようございまーす」
「おはようございまぁす」
それと、にこやかな笑顔で手を振る望と織田さんの姿。
織田さんはクリーム色のワンピースにピンクベージュ色のジャケットと、いつもと同じような服装だけれど、その隣の望は珍しくスーツを着ている。
細身のグレーのスーツがその体の細さをまた引き立てて……って、待って。ちょっと待って。
ていうか……何で、ここに望が!?おまけに織田さんも!?
「……あれ、確か武田さんが来るって……聞いた気がするんだけど」
「武田さん、昨日から急なトラブルで、前に受け持ちしてた取引先に呼び出し食らっててさぁ。しかもそれが大阪で!可哀想だよね〜」
「それで宇井さんが代わりに行くって聞いて、麻美も連れてきてもらったんですぅ」
驚きに声をあげたい気持ちを必死に抑え問いかければ、望からはけらけらと笑いながら説明される状況。
織田さんはその隣をぴったりと守りながら甘い声で言う。
武田さん、大阪に呼び出しは可哀想だけどなにも望に任せていかなくても……!
別に葛西さんとふたりだって構わないのに!寧ろこんなメンバーで過ごすくらいならひとりで来るよ!もう!
心の中で武田さんにそう叫ぶものの、彼の悪意のない、寧ろ善意の笑顔が目に浮かぶ。