シルビア



「武田さんからパンフレット預かってきたんですけど、かなり大きい展示会なんですね。ホール目一杯にメーカーの名前が並んでる」

「はい。アクセサリーや雑貨のメーカーがこんなに揃うことってあんまりないので、貴重な展示会なんです。ちなみにメーカーによってはサンプルが貰えたり、試しに購入出来たりもしますよ」



望の説明を聞きながらパンフレットを広げる葛西さんに、私も覗き込むようにその内容をうかがう。

紙面には確かに、ずらずらと羅列されたメーカー名。大きなホールいっぱいに、見覚えのある会社から知らないような会社まで……これはなかなか見応えありそう。



すると不意に、それまで興味がなさそうに聞いていた織田さんの視線は私の足元へととまる。



「そういえば前から思ってたんですけど、三好さんっていっつもパンツですけど、スカートとか履かないんですかぁ?」

「へ?あー……」



その目は私の白いスキニーパンツを見ていたのだろう。彼女の指摘に、男性陣2名の視線も自然とこちらへ向く。



「確かに、言われてみればここ何年かそんな感じですね。前はスカートも履いてた気がするんですけど」

「まぁ……こっちの方が動きやすいから」



確かに、葛西さんのその言葉の通り。

以前は短めのスカートも平気で履いていたけれど、ここ数年は専らパンツスタイルばかりだ。



というのも、望がいなくなって以来その悲しさを紛らわせるように仕事に没頭することが増え、自然と動きやすさ優先の格好ばかりになり……気付けばこの服装が定番になっていた。

なにかにつけていちいち望が関連するのがまた腹立たしい……。


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