シルビア
「けど正直、パンツばっかりで足隠してると太くなるしぃ、女の子なのにオシャレより動きやすさ優先ってどうなんですかぁ?おまけに髪の毛だってちょっと巻いただけでかなり手抜きじゃないですかぁ〜」
「うっ……」
「それってなんていうか、女の子として終わってるっていうかぁ、やばーい」
ここぞとばかりにチクチクと言われるけれど……反論できることがひとつもない。
『悪かったわね』とでも言ってやりたいけれど、頭のてっぺんから爪先まで綺麗に飾った彼女にそんなことを言えば、僻みっぽくしか感じられないし……。
結果聞き流すという手段を選び、全く笑えていない苦笑いで話を終わらせようとした私に、望はまじまじとこちらを見る。
「うん、確かに。たまにはスカート履いてみてもいいかもね」
「えっ!?」
「折角脚細くて綺麗なラインしてるのに、勿体ない。絶対似合うよ、スカート」
「なっ……」
……なんて、そんな『見たことないけど』みたいな言い方して。過去に何十回だって見ているじゃない。
そうやってまた、他人のふり。……他人、だけどさ。
「っ……無駄話してないでさっさと行こ!見たいところはたくさんあるんだから!」
心のなかで小さく呟いた言葉をかき消すように、私はカツカツと歩き出す。
あぁもう、いやだ。
望は過去の男で、今はただの他人。そうわかっていても、何度言い聞かせても、いちいち心がその一言一言に反応する。
断ち切れない、まま。
ズルズル、ズルズルと、私ばかりが引きずっている。